
| 声出して 暑さはきだす 残暑かな |
| 声出して 秋暑の起居を はげましぬ |
| 雪国の 春の調べや 軒つらら |
| 薄氷の 下に緋鯉や 水ぬるむ |
| 昨日今日を 後先に言う 年になり |
| 踏まれても ふまれてもなほ 蟻の道 |
| 雀の子 かしましき哉 柿落ち葉 |
| 切り株に 森林浴の 一休み |
| 紫蘇に手を 染めて梅干す 土用かな |
| 置く霜や 根元に寄せて 落ち葉哉 |
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夕映えて 大空に舞う とびの群 |
| 今日も暮れ 名残りおしきは 日の速さ |
| 散策の 肩に憩える 秋あかね |
| 月清(さや)か 列もみださず 雁なく夜 |
| 五月雨や 庭の藤蔓 ながながし |
| 山ヶ家や 鳥にのこして 柿二つ |
| 蓮の葉の 水玉揺らす 池の鯉 |
| 枯れ小菊 庇護するごとく 若芽被い |
| 残り雪 春一番の 蕗のとう |
| 山茶花や 紅ひときわの 雪の朝 |
| 雪溶けて 角芽並べる チューリップ |
| 梅雨上がり 若やぐ女の 薄衣 |
| 風花や 松の落ち葉に 舞い降りて |
| 冬枯れし 師走の庭の 雪囲い |
| 枯れ尾花 山の裳裾に さゆらぎて |
| 土筆ん坊 余念なき子の おままごと |
| 啓蟄や 虫も戸惑う もどり寒 |
| 歌一句 出来て楽しき 老後哉 |
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| 波紋の輪 揺らぎて消えて 紅一葉 |
| 秋あかね 止めて野の草 さゆらぎぬ |
| 野仏に 謂れも知らぬ 手をあわせ |
| 納得の ゆかぬ早さで 年を取り |
| スーパーの 袋夕日に 染めてゆき |
| 安産に その父と子の 顔くらべ |
| 秋立ちて 風鈴少し 涼しすぎ |
| 子に一歩 譲って親は 老いてゆき |
| 梅雨の間を 羽干すごとき 鳶の舞 |
| 山ヶ家の 軒に色添え つるし柿 |
| 紫陽花や 一雨毎の 憂愁美 |
| 一日の 暮るるは早し 秋の月 |
| 書きためし 俳句炬燵の 拾いよみ |
| 春雨や 池の波紋に 雨を知り |
| 沈む陽を 立ちつくしてぞ ながめけり |
| 誇大して 惚けし話を 老姉妹 |
| 切先を 揃え軒場の つららかな |
| 熱帯夜 更けて窓辺の 雨の音 |
| 幼子を 抱く画の左手 書きあぐね |
| 波乗りの 赤銅色に 肌光り |
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| 若者の 粟立つ肌や 水垂(た)るる |
| たんぽぽの いずこより来し 町の角 |
| 打ち水や 七色の橋 庭にかけ |
| 黒雲に かくれて夕日 沈みけり |
| 露の玉 こぼれる萩に 道とられ |
| 雨後の庭 詫びつつ老婆 草を抜き |
| 露の玉 置きて紫陽花 七変化 |
| 冬雀 雪に足跡 のこしけり |
| 雪明り つい騙されて 時計見る |
| 初雪や 早出の人の 靴の跡 |
| しんしんと 音なく積もる 雪明かり |
| 考える 事あり空間に 目を忘れ |
| 波しぶき 裾を取られて 夏はゆき |
| 桜の花 散りて苦労の 禿箒 |
| 群がれば 草も春野の 景色かな |
| 一句あり 還暦過ぎし 娘(こ)の賀状 |
| なく雁に 打ちふり見れば 月明かり |
| かたずけし 冬着また出す 戻り寒 |
| 今昔の 思い新たに 箱根越え |
| 打ち水や 雀若葉で 湯浴哉 |
| 衣更え また来年と 鬼笑い |
| 枯尾花 山の裾野で 風まねき |
| 腰かがめ 傘さしかざす 向かい風 |
| 親鳥と まごう巣立ちの 羽甘え |
| 里の灯や 雪にまたたく 早春譜 |
| 年毎に 距離をちじめて 散歩道 |
| 絶句して 日没の海 惜しみけり |
| 荒海や 流れ藻青き 渚かな |
| 冬ごもり 雪気恨めし 陽はくらし |
| 何時来るか いつくるかとて 孫を待ち |
